翻訳者vs人工知能(AI)
翻訳者vs人工知能(AI) 翻訳プラスの評価とは コンサルタントは心配そうでした。「Google翻訳は翻訳プラスにとって脅威ですか?」 私は思わず吹き出してしまいました。そしてこう聞き返したのです。「Google翻訳を使ったことがありますか?」 2012年、私たちは翻訳プラスのSWOT分析を行っていました。Google翻訳はその6年前に発表されていましたが、一般の人々の間でも多くの冷笑を受けており、翻訳業界ではなおさらでした。翻訳結果がチンプンカンプンだったからです。つまり、「Google翻訳」はまったく脅威ではありませんでした。しかしコンサルタントは、「今はそうでなくても、将来的にはどうでしょうか?」と聞いてきたのです。この不吉な質問は、この先何年も私を悩ませることになりました。 AIと翻訳の出会い 2019年まで話を進めましょう。AIブームが盛り上がりを見せ、その中でも最も興味深いもののひとつが「ニューラル機械翻訳(NMT)」です。この種の機械翻訳で形勢は一変すると考えられています。日本では、NMTシステムの広告をいくつも目にします。大阪のXYZ株式会社(仮名)がこのサービスを提供していて、しかもかなり安いことも確かです。これで翻訳プラスも終わりなのでしょうか? 私は試しにXYZ社に申し込みをしてみました。そして、このテストには翻訳プラスが過去に翻訳した文書を使用し、人の手による翻訳を機械翻訳と比較してみたのです。 日本語と英語という言語の組合せは、翻訳の世界で最も難しいものに数えられると聞いても、もっともだと思われるのではないでしょうか。例えば、”a “と “the “の適切な使い方は、人間の翻訳者にとっても難しいことが多いのです。 機械が “a “と “the “を正しく使っていることを発見したときの私のショックを想像してください。さあ、心配になってきました。 NMTを試す 最初のショックから立ち直り、機械翻訳の結果をさらに掘り下げてみると、多くの誤りが見つかりました。例えば、”He research the topic for three years, then she published a report.(彼はこのテーマを研究して、彼女は報告書を発表した) “のように、主語が変わっていないのに、”he “と “she “が入れ替わっていました。また、文章が長くなるほど、翻訳ミスの可能性が高くなることにも気づきました。主語と目的語が逆転している場合もあり、”The man ate fish(人が魚を食べた) “ではなく “The fish ate man(魚が人を食べた) “というような文になっていることもありました。 他の機械翻訳システムでも同じテストをしましたが、語彙や文の構造は違っても、品質はやはり同程度の低レベルでした。他の分野でも試してみましたが、結果は変わりません。法律分野と工作機械分野の文書を機械に翻訳させてみましたが、同様の結果でした。 結局、すべての機械翻訳を使い物になるようにするには、人の手を加える必要がありました。プロの翻訳者が、日本語の原文を読み、英訳を分析して、修正すべき点を見つけ、修正する必要がありました。これは大変な作業です。 誤りを生み出す機械は、ただ故障しているというのではありません。危険です。 評決の行方は どのような研究であっても、使用した方法についての調査をし、その結果を他者に検証し、認証してもらわなければなりません。私も自分の結果を誰かに認証してもらう必要がありました。運よく、まさにそれをしている報告書を見つけることができました。それは、NMTの使用に関してCSAリサーチ社が作成したものでした。結果は明らかでした。 報告書の対象となった翻訳会社(大手)のうち、NMTを試したことがあるのはわずか50%。 その50%のうち、実際に仕事で使用したのは3社に1社にも満たない 機械翻訳がそれほど優れているなら、利用する企業がこれほど少ないのはなぜでしょう?この疑問にも、報告書はきちんと答えてくれています。 「ほとんどの(言語サービス)提供者は、このシステムを十分に信頼しておらず、仕事に役立つというよりも、むしろ害になると感じている…(また、クライアントも)自分のプロジェクトにこれが使われることを望んでいない」 物事には理由がある 「NMTを実際に使うことはあるのですか?」 という質問が出るかもしれません。答えは「イエス」 …